医院コラム
高齢者に多い誤嚥性肺炎、その原因と対策(前編)
こんにちは!鳴門市の和田歯科医院の歯科医師、齋藤です。 誤嚥性肺炎誤嚥性肺炎は、口腔内や咽頭の細菌によって引き起こされます。日本人の主な死因として、①がん ②心筋梗塞(虚血性心疾患) ③脳卒中(脳血管疾患)そして④肺炎・気管支炎が挙げられます。肺炎と気管支炎による死亡の9割は65歳以上の高齢者であり、命にかかわる重大な疾患です。 食べ物や唾液は、口腔から咽頭、食道を経て胃へ送り込まれます。何らかの理由で、誤って咽頭と気管に入ってしまう状態を『誤嚥』と呼びます。健常者でも就寝中には、50%以上の方が検査で誤嚥をしているという研究結果が出ています。 ただ、食べ物を誤嚥したからといって、必ずしも誤嚥性肺炎を発症するわけでもありません。誤嚥性肺炎のメカニズムには、個体の抵抗力と誤嚥物の侵襲性のバランスが大きく関与しています。 誤嚥性肺炎の発症にかかわる要因①口腔の衛生状態口腔内には無数の種類と量の微生物が常在しています。この微生物は口腔粘膜や歯垢の中で増殖し続け、通常は唾液と一緒に大半が胃の中へ運ばれます。胃の中では胃酸によって死滅しますが、肺に入った微生物は肺炎の原因になります。常に口腔内を衛生的に保っていくことが、発症のリスクを下げるためには大切です。 ②口腔機能、嚥下機能食べるために口を開け、口を閉じ、食べ物を咀嚼し、飲み込めるように唾液を混ぜ、形をつくる。この一連が口腔の機能です。口腔の機能には唾液の分泌、舌運動、知覚、味覚も含まれ、安全に食べるためにはどれも欠かせません。この機能が低下したり障害を持つと、飲み込みが上手くいかず誤嚥に繋がります。 ③栄養状態、身体機能、基礎疾患栄養状態が悪いと、身体機能が低下し、身体活動量が少なくなるのも誤嚥性肺炎発症のリスクになります。また、栄養状態や身体機能を悪化させうる基礎疾患にも注意が必要です。(がん・認知症・糖尿病・腎臓病・心不全・呼吸器不全・肝硬変・自己免疫疾患・進行性神経筋疾患など) ④消化管機能胃食道逆流は、胃酸や胃内容物が食道へ逆流する状態で、逆流物が誤嚥されることで肺炎のリスクが高まります。特に、夜間に逆流が起きやすく、誤嚥によって肺へ細菌が運ばれ、誤嚥性肺炎を引き起こす原因となります。便秘が続くと腹部が膨張し、横隔膜を押し上げ、呼吸がしづらくなります。これにより、嚥下時に適切な呼吸ができず誤嚥しやすくなります。 ⑤内服薬薬の中には嚥下機能に影響を与えることがあります。抗コリン薬や利尿剤、一部の向精神薬や抗アレルギー薬は、唾液の分泌量を減らしてしまいます。口腔が乾燥すると嚥下しにくくなり、誤嚥しやすくなります。 ⑥認知機能、食事介助認知機能が低下した方の一部に、食べる事にかかわる機能の低下や障害をきたすことがあります。物を飲み込むタイミングが分からなくなったり、飲み込み動作を忘れるといった症状が出ることがあり、誤嚥のリスクが高まります。 認知機能が低下すると、日常的な口腔ケアが難しくなり、口腔内に細菌が増えることで誤嚥性肺炎のリスクが高まります。認知症や身体機能障害のため自分で食事が出来なくなった場合は、周りの方に食事の介助をしてもらうことになりますが、食事の仕方を工夫しないと栄養が不足したり、誤って肺に食べ物が入ってしまうことがあります。 認知機能低下と誤嚥性肺炎は密接に関連しており、日常生活のサポートを充実させることでリスクを軽減できます。 おわりに誤嚥性肺炎と口腔機能低下症(オーラルフレイル)は高齢者において深く関連しており、互いに影響を及ぼし合っています。 口腔機能検査を通じて、口腔機能が低下していないかを是非当院で検査を受けてみませんか? 歯科医師 齋藤 |