医院コラム
口呼吸の子どもが増えている??
こんにちは。歯科衛生士の阿部です。 子どもに一定数いる口腔機能発達不全近年、口腔器官に異常や障害がないのに、“食べる” “話す”など口腔機能が不十分もしくは正常な機能が獲得できてない状態にあるお子さんが一定数いることが分かってきました。これは、2018年より健康保険にも導入され、口腔機能発達不全症という病名がついています。 特に大きな関心が寄せられているのは、口呼吸と口唇閉鎖不全症(お口がポカンと開いた状態)です。これらは、虫歯や歯周病、不正咬合といった口腔領域への悪影響ではなく、アレルギー疾患や学力低下など、小児の身体的・精神的な成長・発達の妨げとなることが指摘されてきました。 2014年に行われた調査より、日本国内の子どもの30.7%に日常的な口唇閉鎖不全症が見られることが分かっています。これは全国で約400万人になります。また3歳児では19%ですが、12歳児では39.7%いるというデータがあり、口唇閉鎖不全は自然治癒が期待しにくいと考えられています。 口呼吸や口唇閉鎖不全があるとどうなるでしょうか??口腔内が乾燥しやすくなる、口腔周囲の筋肉の動きが悪くなる、鼻呼吸と比べて病原菌を取り込みやすいなどの理由から、以下のような問題が起こります。 ①食べ方の影響口呼吸が癖になっていると唇を閉じてモグモグ噛むと息苦しくなるので、口を開けてクチャクチャと噛んで飲み込む食べ方になります。よく噛んで飲み込むためには、口唇閉鎖がきちんとできる必要があります。 ②鼻、喉の問題鼻閉が原因となり口呼吸が起こる場合もあります。また口呼吸や口唇閉鎖不全による免疫システムが障害され、アレルギー性鼻炎や喘息など喉や鼻に異常きたす疾患も引き起こす場合もあります。 ③飲食習慣口呼吸や口唇閉鎖不全があると、うまく噛めず噛む回数も減るので早食いにつながったり、食べた後、お口の中に食べ物がずっと残っていたりすることがあります。またよく噛めないことから柔らかいものを好む偏食の原因にもなります。 ④歯や歯茎の問題口呼吸により口腔内が乾燥することで、唾液の分泌量の減少と唾液の緩衝能低下が起こり、虫歯のリスクが上がります。喉の渇きを潤すために糖分の入ったジュースやスポーツドリンクを頻繁に飲むと、さらに虫歯のリスクが高くなります。口が乾くことで口腔内の環境が悪くなり前歯の歯茎の炎症が見られます。また前歯が乾きやすくなると、歯の表面が着色しやすくなります。 ⑤口臭口腔内の乾燥により唾液の分泌量の減少が始まり、口腔内細菌が増えるため口臭の原因になります。 ⑥口唇の乾燥口呼吸のたびに唇が乾燥した空気が通過するので、唇が出血したりひび割れ、皮むけなどが見られることもあります。 ⑦顔貌への影響口唇閉鎖不全のお子さんの顔つきには、鼻が低い、口元が突出している、顎が後方に下がっているという特徴があります。またこれらの特徴は3歳位の頃に出現するということも分かってきています。 ⑧全身的な問題口呼吸や口唇閉鎖不全があると、ほこりやウィルスを含む乾燥した空気が直接喉に当たるため、外敵から体を守る免疫系に異常を引き起こすと考えられています。子どもに関しては口呼吸になると呼吸数、血中酸素、歩行距離が低下する、あるいは喘息、口呼吸との関連を指摘する報告もあります。胸式呼吸の出現率が高く不良姿勢、あるいは胸郭の変形を引き起こします。さらには精神面への影響に関する報告もあります。このように口呼吸は口腔のみならず、全身にも弊害をもたらすのです。 当院では口唇閉鎖検査やトレーニングも行っています口呼吸や口唇閉鎖不全を早期発見し改善する事は、将来起こり得る歯科的・全身的な問題を未然に防ぎ、正常な口腔機能の発達を促す有効手段となります。小児期のうちに十分な口腔機能を健全に発達させることは成人期における機能の安定をもたらし、老年期におけるオーラルフレイル予防へとつながっていきます。 歯科衛生士 阿部 |