医院コラム
歯周病と関係の深い10の病気や症状
歯科医師の齋藤です。今回は、歯周病と関係の深い10の病気や症状について具体的にお話しします。 歯周病と関係の深い10の病気や症状①糖尿病糖尿病は『インスリンの作用不足によって慢性高血糖をきたし、長期化することで特有の合併症を生じるとともに、動脈硬化をも進行させる病気』(日本糖尿病学会)といわれています。 歯周病は糖尿病の第6の合併症といわれています。 ●糖尿病が進行➡歯周病が悪化 ②誤嚥性肺炎正常な嚥下は、食べ物や唾液を認知し口から取り込み、食道を通って胃へと運びます。一方、誤嚥は食べ物や唾液が食道ではなく気管や肺に入ってしまいます。 誤嚥性肺炎は、誤って気管に入った唾液中の細菌が肺に感染して起こる病気です。誤嚥性肺炎を起こす細菌は歯周病原性細菌を中心とした口腔細菌です。 ③心臓・脳血管疾患歯周病が進行すると、歯周病細菌とその細菌が産生する毒素や炎症物質が歯肉の毛細血管を通して全身の血管や心臓に運ばれ動脈硬化や血管の閉塞を引き起こすと考えられています。(動脈硬化:血管内壁が厚くなり、血行不順でできた血栓から、歯周病菌が検出されている。) ④低体重児早産妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなると指摘されています。歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかといわれています。 ⑤骨粗鬆症骨粗鬆症になると歯周病にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。原因はエストロゲンの欠乏です。エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなり、歯を支える歯槽骨ももろくなります。 ⑥癌歯周病細菌は、癌細胞の増殖や転移を促進する物質を産生します。また、歯周病細菌が癌細胞に直接感染し、癌細胞を増殖させる可能性があるといわれています。近年では歯周病は、大腸癌・肺癌・食道癌・膵臓癌・乳癌・胃癌の発症や悪化に関与していると報告されています。 ⑦認知症歯周病菌のひとつであるPg菌がもつ「ジンジパイン」というたんぱく質分解酵素は、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβとの関わりが深いことが明らかになっています。このアミロイドβがアルツハイマー病を進行させることから、歯周病と認知症には密接な関係があるとわかってきています。 ⑧関節リウマチ関節リウマチを診断する指標が抗CCP抗体です。近年の研究で、歯周病の原因菌の一種(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌)が、抗CCP抗体を生み出すことが分かっています。歯周病ではこの細菌が増え、抗CCP抗体を産生させ関節リウマチを発症してしまう可能性があると現在考えられています。 ⑨肥満歯周病と肥満は相互に関連しています。脂肪細胞でつくられる炎症性サイトカイン「TNF-α」は、歯を支える骨を溶かし、歯周病を発症・進行させる作用があります。また、「TNF-α」の影響で脂肪細胞が肥大しやすくなり、脂肪を蓄えやすくなるのではと考えられ、「TNF-α」が血中を移動することによって血管内皮細胞や白血球を刺激し、血管に負担をかけて動脈硬化や心筋梗塞発症のリスクが高まるともいわれています。 ⑩インフルエンザなどのウイルス感染歯周病は細菌が、インフルエンザはウイルスが、それぞれ引き起こします。原因が異なりますが、関連があることがわかっています。お口の中に歯周病の細菌が多いと、その細菌が出す酵素や毒素によって、気道を守っている粘液が破壊され炎症を起こし、そこからウイルスが体内に侵入し感染しやすくなります。 歯科医院で定期的な検診を受けましょう歯周病の人は、そうでない人に比べ全身疾患のリスクは数倍違うといわれています。全身疾患と歯周病の両方を患っている人は、かかりつけ医と歯科医との連携でそれぞれの病気の予防と治療を行うことが大切です。歯周病の予防・治療を行うことで、全身疾患の予防や悪化の予防、そして全身の健康を守ることにもつながります。 歯科医院で定期的な検診を受け、歯周病の予防をすることが大切ですね。以前のコラムでお話しした「歯科で見つかる骨粗鬆症!?」「定期的な検診で適切なプロケアを受けましょう」をご参考になさってください。 歯科医師 齋藤 |