医院コラム
高齢者に多い誤嚥性肺炎、その原因と対策(後編)
こんにちは!鳴門市の和田歯科医院の歯科医師、齋藤です。 口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防する口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防するという効果は、すでに多くの研究で立証されています。口腔ケアは口腔保清(口の中を清潔に保つ)と機能的口腔ケア(口腔のリハビリテーション)の2つから構成されます。 口腔機能の低下を自覚することはありませんが、口唇や舌、噛む力、頬の力は加齢に伴い低下してきます。唾液量も加齢とともに変化することがあります。 大きな唾液腺①耳下腺(じかせん)一番大きく唾液の分泌量も多い。特に食事の際に活発に働きます。位置は耳の前から下にかけて位置しています。頬の辺りで、耳の少し前から下顎の角にかけて広がっています。 ②顎下腺(がっかせん)下顎骨の内側、顎の真下の位置にあります。下顎の角付近から少し前方にかけて位置し、口腔底に向けて唾液を分泌します。安静時には、最も多くの唾液を分泌します。 ③舌下腺(ぜっかせん)舌の真下にあり、顎下腺のさらに前方に広がり、舌の付け根付近にある小さな開口部から唾液を分泌します。 小さな唾液腺小唾液腺:口唇の内側、頬、口蓋、舌など、口腔内全体にあり、少量の唾液を分泌しています。唾液腺をマッサージすると唾液が出やすくなりますが、高齢者は顎下腺や舌下腺のマッサージを行う際には注意が必要です。頸部のマッサージによって、頸動脈洞反射(徐脈や低血圧)を誘発することがあります。耳下腺マッサージのみにとどめると良いでしょう。 以前のコラム「唾液が少ないとどうなるの?唾液の役割と増やす対処法」も是非参考にしてみてください。 口腔内の細菌を減らす口腔清掃では、口腔内の細菌を減らすことが重要です。細菌が多い場所は、歯垢の溜まりやすい場所、磨き残しが多い場所、食渣(口の中に残された食べ物などの残りカス)が溜まりやすい場所、そして舌背です。 細菌数が多いのも問題ですが、口腔内の細菌環境が悪いことも誤嚥性肺炎を引き起こしやすい原因です。 禁食中の方は細菌環境が悪いことが知られています。禁食とは、診療や治療、検査、手術を行う前に一定期間食事を摂らないようにする医療行為です。唾液の誤嚥や胃内容物の逆流、口腔内の細菌の増殖(唾液分泌の減少)、また多剤耐性菌、日和見感染、肺炎関連筋が多く検出されるようになります。このような場合は口腔機能を改善するためのアプローチ(機能的口腔ケア)が効果的と思われます。 高齢者の口腔ケア「食事を食べていない」、「総入れ歯だから」、と口腔ケアは必要ないと思ってしまいますよね?もし、口臭がする高齢者の場合、口腔内の細菌数は多いと思ってください。口腔粘膜を丁寧にケアすることで、口臭は軽減する事でしょう。 口腔保清口腔ケアは次の順番で行いましょう。 ①歯みがき歯がある場合の主役は、歯ブラシを使った歯磨きです。歯の表面には歯垢が付着します。歯垢には無数の種類の細菌が増殖した「細菌の塊」です。この歯垢は歯ブラシを使った摩擦が除去に有効です。歯並びが悪い、歯と歯の間、歯と歯肉の堺目が磨き残しが多い場所です。 ②粘膜清掃細菌が存在しているのは歯垢の中だけではありません。粘膜にも存在し、唾液を飲み込むときに一緒に飲み込まれます。うがいをしっかりすることで、粘膜上の過剰な細菌は除去されます。うがいが出来ない場合はスポンジブラシを用いて優しく摩擦をしましょう。 ③舌ブラッシング舌粘膜は構造が複雑なため、入念なケアが必要です。舌専用のブラシをつかいましょう。 ④うがい・排出歯磨き、粘膜清掃、舌ブラッシングは付着した細菌が口腔内にばらまかれた状態なため、このまま放置すると唾液とともに気道に大量の細菌が流れ込むリスクが高くなります。口腔清掃を行う際はうがいを行い、排出しましょう。うがいが出来ない場合はガーゼなどで拭き取ります。 ⑤保湿口腔乾燥や口呼吸を認める場合は、保湿剤を使用しましょう。 機能的口腔ケア口腔機能にアプローチするケアには、「嚥下体操」「口腔体操」があります。
※高齢者の方の嚥下練習は、専門家の指導のもとで行うことが推奨されています。 おわりに誤嚥そのものを完全になくすことは難しいため、口腔ケアを行うことでお口の中の細菌を減らし、清潔を保つことが安全かつ効果的な予防法です。高齢者だけでなく、全ての方に大切と言えます。普段からの定期的な口腔ケアを心掛けていただき、ぜひ歯科医院でのチェックやクリーニングをご利用ください。 歯科医師 齋藤 |